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「氷の轍」
2017年5月12日

桜木紫乃さんは好きな作家さんです。



図書館で借りた「氷の轍」は、前半
桜木紫乃さん特有の俗っぽさ
(そこが好きです^^)が感じられずで
物足りなかったのですが、折り返し地点から
ぐいぐいおもしろくなりました。


主人公は大門(ついつい懐かしの石原軍団を
思い出してまう)という女性刑事です。
北海道釧路の「湿度」や「潮の匂い」が
絡まってくるような細かい描写は
いつもながらの臨場感がありました。
北海道と本州は同じ日本でありながら
こんなにも感覚が違うものなのか
ということも感じました。


最終章、登場人物(誰かをかくと
ネタバレになるのでナイショ)が
大門刑事に言う

「自分の選択が間違っていなかったという
答えを欲すると、人間っていくらでも時間を
かけてそのことに取り組めるものだと思うから。(略)
自分の選択に対する答って、誰も出してはくれないですしね」


という言葉が印象的でした。
“選択しながら生きてきた我が道”を否定したくないという
思いが私にもありますから。


「氷の轍」というタイトルは、読み終えて
しっくり腑に落ちました。
極寒の地で凍った雪道を
幼な子を乗せたリヤカーの車輪が描く”わだち”。
ほんの60年くらい前まで、この小説のような
悲惨なことがあったのかと
途中、苦しくなりました。

 
小説の中に北原白秋の「白金之獨樂」の
「他ト我」と言う詩が物語の
射し色になっています。 

二人デ居タレドマダ淋シ、
 一人ニナツタラナホ淋シ、
シンジツ二人ハ遣瀬ナシ、
シンジツ一人ハ堪ヘガタシ。


この詩が暗さを増します。
桜木さんならではの闇です。
この闇、嫌いじゃないなぁ。

投稿者 rin5chan : 2017年5月12日 カテゴリー: 気まま図書館 | コメントはまだありません »

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