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「猫のためいき鵜の寝言十七音の内と外」
2019年3月11日

「猫のためいき鵜の寝言十七音の内と外」は
テーマごとにエッセイと俳句が綴られいます。



まず第一章、集団就職をする子供の章で
泣けるのです。
12歳とか15歳くらいで親元を離れ
自立しなきゃならなかったって
親もどんなにか辛かったろうと涙が出ました。
昔の人は大人になるのが早かったことでしょうね。


著者の正木ゆう子さんは毎年、
長野まで鷹の渡りを見に行くのだそうで
旦那さんから「去年も見たのに」と言われた時の

昨日ビールを飲んだら、今日は飲まなくていいのか。

という返しに吹き出しました。
桜も毎年観に行きますものね(*^▽^*)


正木さんは日本酒が好きで

ふだんはペンより重いものは持てない私が、
一升瓶だけは片手で持てるのが不思議である。

あははあはは!
わかるわかる!


そして、猫好きさんでもあって

この世に猫を抱いて眠るほど気持ちのよいことはない。

まったく同感です。
愛猫ちゃんをお布団の中で
抱っこして眠ったこと今も良き思い出です。


言葉も綺麗で心が穏やかになれる一冊でした。

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「かけらのかたち」
2019年3月4日

深沢潮さんの「かけらのかたち」は
タイプの違う女性たちの連作短編で
自己承認欲求の闇を鮮やかにえがいています。



母親がSNSに公開している望む生き方に
窮屈さを感じながらよせてゆこうとする娘の安奈や、
妻が幸せな家庭を書いている体で
人から羨まれるような「自身の理想の家庭」を
BLOGに綴る夫などSNSに翻弄されている
人達が各章の主人公です。


六つのお話の中の「ミ・キュイ」に出てくる
杉坂さんという60歳くらいの女性の
「女としての始末の付け方」について語る
源氏物語の読書会のお話は素敵でした。


最終章で

「人からどう見られたいかでなく、自分がどうありたいか」

安奈の気づきにホッとしました。


深沢潮さんは「かっぱーん」を読んだことがありますが
現実にありそうなゆえに背筋が凍るくらい怖い話でした。


マウティングは自分のまわりには
実生活でもないです、たぶん。
私もインスタグラムなどしていますが
SNSで卒業新郎新婦様の暮らしや
お子様の成長を知ったり
よそのお家の猫ちゃんみたり
花の便りを知ったりと穏やかなことです。

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「珠玉」
2019年2月26日

以前、彩瀬まるさんの
「眠れない夜は体を脱いで」
「桜の下で待っている」などを読み
好きな文体だと感じる作家さんだったので
図書館に「珠玉」を予約して楽しみにしていました。



ですが、最初のほうは小間切れに
語り手が前ぶれなく変わるので
「え?だれ?目線?」
と、見失う感じになって
読みにくく、少し戻って読み返すと
「ああ、なるほど」でした。
黒蝶真珠目線なんて考えもしなかったのです。


祖母が美貌の偉大な歌姫であることが
プレッシャーで自身の外見や才能に
コンプレックスを抱く女性が主人公です。


読んでて、昭和のスターの祖母の
設定に山口百恵さん、中森明菜さんがよぎりました。
読後、参考文献を見て納得でした。


本物と偽物の違いについてお話は展開します。
樹脂パールが黒蝶真珠に話す言葉

それ自体の価値は大したことなくても、
自分の味方だって強く思えるものが
鞄に入ってるだけで、ずいぶん頑張れたって。

偽物であっても本物であっても、
その人の価値観次第で珠玉になるということでしょうか。


誰もが大事な「珠玉」を
持っているはずと教えられるお話でした。

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「おとぎカンパニー」
2019年2月21日

田丸雅智さんの「おとぎカンパニー」は
グリム童話やアンデルセン童話などを
素材にしたブラックファンタジーです。



「マッチ売りの少女」のパロディの
「夕陽売りの少女」のノスタルジック感が好きでした。

夕陽のように見えるだけじゃないの。
人の中にある、夕陽の思い出にも火をともせるものなの

読みながら、幼い頃に
そろばん塾の帰りに坂の上からみた夕陽や
近所の小路からするお出汁の匂いまで蘇りました。

 

現代を舞台に風刺やホラーもあったけど
田丸雅智さんが描くとほわりとあたたかいのです。
勧善懲悪で誠実であることの大切さを
教えてくれるものもあります。
まだまだ寒い日はあるけど暖まれる一冊でした。

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「吹上奇譚第2話」
2019年2月18日

吉本ばななさんの「吹上奇譚第2話」は
前作に続いての哲学ホラーとのことですが
人情味もあってファンタジー色強く
屍や墓場と死の匂いがするのに
どこか牧歌的で爽やかです。



美鈴という少女が話すと

言葉がこんぺいとうくらいの小さな字が
ぽろぽろと口から出ては、雪みたいに消えてゆく

楽しいじゃありませんか(o^∇^o)ノ
ばななワールド炸裂です。


少女の霊に取り憑かれた美鈴
(黒美鈴とよぶのですが)のくだりでは
霊も霊に体をのっとられたほうも
互いを思いやる感じが優しくてホロリときました。


あとがきで、今回の作品の執筆の時期は
「青春を象徴した人たちとの別れ」が
多くあったそうです。
大切な人達や愛犬、
おばあちゃん猫ちゃんと続く
悲しいお別れがあり
30年の戦友だったという、さくらももこさんとの
ことにもふれていました。


吹上奇譚第1話に続いて
深いテーマを扱っているのに
あったかくほのぼのするお話でした。

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「あなたの愛人の名前は」
2019年2月12日

島本理生さんの「あなたの愛人の名前は」は
ドキドキあっという間に読めます。



恋愛とは言えないような危なっかしくも
引き寄せあう男女の関係が
人称の異なる短編で収められていて
お話達が繋がっているのです。
一個だけ猫目線の章がありましたっけ。


「氷の夜に」が純文学のような文体で
「あなたは知らない」と「俺だけが知らない」が
女性側からと男性側から一対の作品でした。


道ならぬ恋、幸福感をえたいと
埋められないものを補う感じの男と女。
が、島本理生さんの繊細な感情の表現で
描かれると湿度持ちつつの清涼感がありました。

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「それでも空は青い」
2019年2月8日

荻原浩さんの「それでも空は青い」は
ファンタジー、ヒューマン、ホラーものまで
コミカルに描かれてる短編集です。



帯には「人間関係に正解なんてない。
人づきあいに悩む背中をそっと
押してくれる7つの物語」とあります。
確かにそれぞれの家族の不器用な感じは
ほっこりあたたかくてホロっときました。


「人生はパイナップル」が特に好きで
戦争体験のある祖父の思い出と
孫の現代の思いが交互に語られます。
孫の誕生日が終戦記念日であることも
きっと、意味があるんですね。


「どんなに悲しくても辛くても
空って青いんだよな。」
誰もが、辛い時、空を仰いで
こう感じたことあるのではないでしょうか。
ハートウォーミングなお話達でした。

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「光まで5分」
2019年2月5日

桜木紫乃さんの「光まで5分」は
沖縄を舞台にしたノワール小説です。



いつも暗黒なんだけど、
悪い奴はいたっていいんだけど、
金と暴力と性の
記憶から自由になれない
流されていくだけの主人公の生き方に
読後感はどんよりとなりました。


今回は救いも癒しもまるでなく
桜木ワールドのファンとしては
すっきりしない終わり方でした。

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「髪結百花」
2019年1月29日

泉ゆたかさんの「髪結百花」は
吉原を舞台にした髪結さんのお仕事
時代小説でした。



各章で髪を結いあげてゆく
描写にワクワクしました。
表紙は灯ろう鬢です。
花魁の艶めかしさ
着物やかんざしの華やかさを
想像するとさらに奥行きが広がるようです。


四章では、懐妊の時から
「この子が生きてくれるなら」
と、我が子のために死ぬことは
「そんな嬉しい死に方」何も怖くないと
言い切る潔い花魁の姿に感動しました。


遊郭での花魁の悲惨な境遇に
寄り添う髪結いさんの女性としての
人生もまた悲しいものです。
けれど、最終章では
登場人物すべてが好きになれました。


読み終えてこんな風に命がけで
産んでもらったんだなぁ
母親に感謝しなければって思いました。

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「愉楽にて」
2019年1月25日

図書館で順番待ちの長かった
林真理子さんの「愉楽にて」が読めました。



二人の富裕層の男性が主役で
東京、京都、シンガポールを舞台に
現代の源氏物語のごとく
優雅で甘美なことでした。


登場人物が「あ、あのIT社長のこと」や
「きっと、あの会社ね」ってうかがい知れて
林真理子さんが実際に見聞きしていることを
元に構築しているんだろうと感じました。
そして、女性を値踏みするごとくな
お化粧や服装、雰囲気なんかの描写がさすがでした。


いくつになっても甲斐性があれば
恋ができるというメッセージを受け取った思いです。

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